派遣の引き止めがしつこいときの対処法|退職の伝え方と相談先

この記事に書かれていること

派遣元と派遣先が引き止める背景を整理し、退職意思を最初に伝える相手が雇用契約を結んでいる派遣元であることを解説します。

感謝・変わらない退職意思・希望する最終就業日を短く伝え、待遇や配置の提案は書面に反映されるかを確認して判断します。

退職日までの引き継ぎや貸与品の返却、保険の手続きに加え、強引な引き止めに困ったときの相談先と次の働き方の決め方を紹介します。

派遣で働いていて、辞めたいと伝えたのに担当の営業から何度も電話が来る。就業先の社員からも「もう少し続けてほしい」と言われ、断り切れないまま日が過ぎている。こうした状況に置かれると、誰に何を伝えれば話が前に進むのか分からなくなってしまいます。

覚えておきたいのは、退職の意思を伝える相手が、毎日通っている就業先ではなく、雇用契約を結んでいる派遣元だという点です。伝える先を間違えると、話が非公式なまま広がり、営業担当から「本人からは聞いていない」と巻き戻されてしまいます。

この記事では、引き止めが起きる背景から、断り方、退職日までの手続き、強引な引き止めに困ったときの相談先までを順に説明します。

目次

勤め先が派遣社員を引き止める背景

しつこく引き止められるのは、あなたの働きぶりへの評価だけが理由ではありません。派遣という働き方には派遣元と派遣先という2つの会社が関わっていて、それぞれの側に「辞められると困る事情」が存在するからです。

派遣元の事情

派遣元にとっては、あなたが就業を続けているあいだ、派遣先からの派遣料金が入り続けます。契約期間の途中で抜けられると派遣先との契約に穴が空き、代わりの人をすぐに立てられなければ信用にも関わりかねません。だからこそ営業担当は、まず「もう一度考えてほしい」と伝える方向で動きます。

派遣先の事情

一方、派遣先の側にあるのは、業務を回す人手が減るという問題です。派遣を新しく受け入れるには社内の稟議や派遣元との契約手続きが必要で、明日から代わりの人が来るわけではありません。日々一緒に働いている社員が「辞めないでほしい」と言うのは、たいていこの事情から出た言葉でしょう。

つまり、引き止めの言葉の多くは、あなたの判断が誤っているという指摘ではなく、相手側の都合を伝えるものです。

慰留を受けたときは、自分の決断が間違っているのだろうかと考え込むのではなく、相手が何に困っているのかを切り離して聞いてください。

派遣で退職を伝える相手と、先に確認すること

退職を切り出す前に、決めておくことが2つあります。誰に最初に伝えるのかということと、いまの契約がいつまでなのかということです。

派遣は契約の相手と働く場所が分かれているため、この2つを取り違えると、話が進まないまま日程だけが迫ってしまいます。

雇用契約の相手である派遣元へ、まず退職意思を伝える

退職の意思は、派遣元の担当者へ最初に伝えてください。派遣で働くとき、労働契約を結んでいる相手は派遣元で、派遣先とのあいだにあるのは指揮命令の関係にすぎません。派遣契約と労働契約は別の契約とされ、派遣労働者の使用者は派遣元にあたります(東京労働局)。

順番を逆にすると、話がこじれかねません。就業先の上司へ先に相談した場合、その情報は派遣先の担当者から派遣元へ伝わり、営業担当が「本人からは聞いていない」と受け取ることになるためです。事実の確認からやり直しになるうえ、就業先での立場も気まずくなる可能性があります。

派遣先での最終就業日と、契約期間・更新の有無を確認する

次に、手元の雇用契約書と就業条件明示書を開き、契約期間の満了日を確かめましょう。派遣の退職は、契約期間の満了に合わせて更新しないのか、それとも期間の途中で辞めるのかによって、進め方も難しさも変わります。

契約の状況 基本的な進め方 確認事項
有期契約を満了して更新しない 契約を更新しない意思を、派遣元へ早めに伝える 更新意思の回答期限、派遣先での最終就業日、派遣元の退職日
有期契約の途中で退職したい 退職したい事情と希望日を派遣元へ伝え、契約終了日を協議する やむを得ない事情の有無、契約期間、引き継ぎ、有給休暇
1年を超える有期契約で、開始から1年を経過した 一部の例外を除き、派遣元へ申し出ることで退職できる 契約開始日、労働基準法附則137条の対象か
無期雇用派遣 派遣元との無期労働契約について退職を申し出る 就業規則の手続き、希望退職日、最終就業日

※有期契約の途中退職は、個別の契約内容や事情によって扱いが異なります。無断で出勤をやめず、まず派遣元へ相談してください。

表に挙げた条文の内容は、厚生労働省の「確かめよう労働条件」で確認してみてください。自分の契約がどれにあたるかが分かれば、いつまでに何を伝えればよいのかも決まります。

派遣の引き止めがしつこいときの断り方

伝える相手と契約の内容が固まったら、あとは断り方です。ここでつまずく人の多くは、丁寧に説明しようとするあまり、かえって交渉の余地を残してしまっています。伝える内容を短く固定し、条件を出されたときの答え方まで決めておきましょう。

感謝・退職意思・希望日を短く伝え、説明を繰り返しすぎない

引き止めが長引くときは、伝える内容を3つに絞ってください。

  • お世話になったことへの感謝
  • 退職の意思が変わらないこと
  • 希望する最終就業日

理由を詳しく話すほど納得してもらえる、というものではありません。伝える理由は「一身上の都合により」で足ります。

同じ質問を何度も受けるようなら、「◯月◯日で就業を終えたいという気持ちは変わりません」と一文だけ返し、それ以上の説明を足さないでください。電話で押し切られそうなときは「あらためてメールでお送りします」と切り上げ、文字で残す方法に切り替えると、押し問答が続きにくくなります。

派遣元へ退職を伝える例
お世話になっております。〇〇です。

今後の就業についてお伝えしたいことがあり、ご連絡しました。
一身上の都合により、現在の契約満了日である〇月〇日をもって契約を更新せず、派遣元を退職したいと考えています。

退職の意思は固まっており、変更の予定はありません。
必要な手続きと、派遣先での最終就業日についてご案内をお願いいたします。

時給や配置の提示を受けたときは、判断基準を持って返答する

待遇の見直しや別の就業先を提示されたら、その場での回答は控えましょう。提示を受けて気持ちが揺れるのは自然なことですが、口頭の条件はあとから変わることもあり、判断の材料としては足りません。

確認したいのは、次の4点です。

  • 新しい時給がいつから適用されるのか
  • 就業先や業務内容がどう変わるのか
  • 契約期間はいつまでで、更新の見込みはあるのか
  • その条件が書面(雇用契約書・就業条件明示書)に反映されるのか

書面に残らない提案は受けない、と先に決めておけば、その場で迷いません。辞めたい理由をあらかじめ書き出しておくと、提示された条件がその理由を解消するものかどうかを、その場で判断できるでしょう。

退職日までにする引き継ぎ・貸与品・手続き

最終就業日が決まったら、返すもの・受け取るもの・自分で進める手続きを分けて整理しましょう。派遣は返却先も書類の発行元も派遣元と派遣先に分かれているため、まとめて考えると抜けが出やすくなります。

派遣元と派遣先で、返却物・連絡先・必要書類を確認する

返却と受け取りは、派遣元と派遣先に分けて一覧にしてください。主なやり取りは以下のとおりです。

相手 返却・確認するもの 主な確認事項
派遣先 入館証、貸与パソコン、スマートフォン、制服、鍵、業務資料 返却日、返却方法、業務データの保存・削除、引き継ぎ先
派遣元 資格確認書、派遣元からの貸与品 有給残日数、退職日、社会保険の資格喪失日
派遣元から受け取る書類 離職票、雇用保険被保険者証、源泉徴収票、健康保険資格喪失証明書 発行予定日、送付先、発行依頼が必要か

※マイナンバーカードは派遣元・派遣先へ返却しません。資格確認書が交付されている場合は、派遣元の案内に従ってください。

引き継ぎは、就業先の指揮命令者と相談しながら進めましょう。担当している業務の手順を書き出し、進行中の案件と締め切りを一覧にしておけば、後任が決まっていない場合でも、社員がそのまま引き継げる状態になります。

離職票は派遣元が手続きをして発行するため、最終就業日に受け取れるものではありません。退職を伝えるのと同じタイミングで、離職票が必要かどうかを担当者へ伝えておきましょう。

退職後の保険や生活費も含め、次の予定を整理する

派遣元で健康保険や厚生年金に加入していた場合、その資格を失うのは退職日の翌日です。派遣元には、派遣労働者の健康保険・厚生年金保険・雇用保険への適正な加入が義務づけられています。自分が加入していたかどうかは、給与明細の控除欄で確認してください。

次の就業先がすぐに決まっていないなら、期限のある手続きから進めましょう。

手続き 期限の目安 窓口 確認事項
健康保険の任意継続 退職日の翌日から20日以内 協会けんぽ支部または加入していた健康保険組合 退職日までに継続2か月以上の加入が必要
国民健康保険への加入 原則、退職日の翌日から14日以内 住所地の市区町村 保険料、減免制度、必要書類
家族の健康保険の扶養に入る 家族の勤務先へ早めに確認 家族の勤務先 収入要件、必要書類、認定日
国民年金への種別変更 原則、退職日の翌日から14日以内 住所地の市区町村 次の会社へすぐ入社する場合は不要になることがある
雇用保険の受給手続き 離職票を受け取った後、早めに手続き 住所地を管轄するハローワーク 被保険者期間、離職理由、求職できる状態か

任意継続を選べるのは、退職日までに継続して2か月以上の被保険者期間がある場合に限られ、加入できる期間も最長2年間です(全国健康保険協会)。

国民健康保険は退職日の翌日から14日以内に届け出るものとされ、国民年金についても、同じく14日以内に種別変更の手続きを行います。雇用保険の基本手当を受け取るには、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あることなどが必要です。

自分の意思で契約を更新しなかった場合は自己都合の離職にあたるため、7日間の待期期間が終わったあとも、しばらくは基本手当を受け取れません。

給付制限の期間は、退職日が2025年(令和7年)4月1日以降であれば原則1か月です(厚生労働省/2026年8月時点)。収入が止まる期間を見込み、家賃や保険料の支払いに何か月分の蓄えが必要かを先に計算しておきましょう。

強引な引き止めや不利益な扱いが心配なときの相談先

退職を伝えても手続きが進まない、強い言葉を使われる、更新しないと言ったとたんに扱いが変わった。こうした場合は、以下の順に相談してください。

  • 派遣元の企業
  • 派遣先企業の相談窓口
  • 都道府県労働局

社内で解決できるならそのほうが早く済むので、外部の窓口は、それでも動かないときの手段と考えてください。

派遣元の企業

最初の相談先は、派遣元です。担当の営業とのやり取りで行き詰まっているなら、その上長や派遣元の相談窓口へ連絡してください。

派遣元には派遣元責任者が選任されており、派遣労働者から苦情の申出があったときは、適切に処理する責務を負っています(東京労働局)。

連絡する前に、これまでのやり取りを時系列で整理しておきましょう。

  • 退職を伝えた日
  • 相手の返答
  • 相手方からの連絡頻度
  • 相手方の発言内容

4点をメモにまとめておけば、担当者を替えてほしいのか手続きを進めてほしいのかという要望も、短い言葉で伝えられます。

担当者と直接話すのがつらいなら、メールや問い合わせフォームでかまいません。文字で残しておけば、相談先を外部へ広げるときに経緯の資料としてそのまま使えます。

派遣先企業の相談窓口

就業先での出来事に困っているなら、派遣先へ申し出てもかまいません。派遣元と派遣先は、どちらも派遣労働者から苦情の申出があった場合、適切に処理する責務を負うとされています。

申し出る先は、派遣先責任者や、就業条件明示書に記載された苦情の申出先です。手元の書類に担当者の氏名と連絡先が書かれているので、退職を切り出す前に確認しておきましょう。

ただし、退職そのものの手続きは、雇用契約の相手である派遣元との話になります。派遣先へ相談するのは、就業中の環境や引き継ぎの進め方で困っているときに限ると考えてください。

都道府県労働局

派遣元にも派遣先にも相談しづらい、あるいは相談しても状況が変わらないときは、都道府県労働局が窓口になります。労働者派遣に関する相談は各労働局の需給調整事業課などが担当しており、厚生労働省の窓口一覧から、自分の地域の連絡先を調べてください。

労働問題全般であれば、総合労働相談コーナーも利用できます。解雇や雇止め、いじめ・嫌がらせといった相談を扱う窓口で、予約は要らず、相談は無料です。全国378か所に設置されているため、住まいの近くにある窓口を探せます(厚生労働省)。

外部の窓口へ相談するときは、契約書と就業条件明示書、やり取りの記録を手元に用意しておくようにしましょう。

次の職場で繰り返さないための方法

引き止めをやり過ごして退職できたとしても、次の職場で同じことが起きるなら意味がありません。今回の経験は、次の仕事を選ぶときの条件へ変えておきましょう。

安定性・仕事内容・教育体制を比較して、次の働き方を決める

最初に決めるのは、派遣を続けるか、直接雇用を目指すかです。同じ仕事内容でも、雇用の形が変われば契約の期限や教育の受け方まで変わるため、求人を探し始める前に方向を決めておくとよいでしょう。

比較項目 派遣 直接雇用
雇用契約の相手 派遣元 実際に働く会社
雇用期間 有期雇用と無期雇用がある 正社員・契約社員などにより異なる
業務の範囲 就業条件明示書や派遣契約で定められた業務が中心 雇用契約や就業規則の範囲で担当が変わることがある
相談先 派遣元担当者、派遣元責任者、派遣先責任者など 直属の上司、人事、社内相談窓口など
教育・研修 派遣元の教育訓練と派遣先での業務説明を確認する 会社や雇用区分によって研修・OJTの内容が異なる
仕事の変更 別の派遣先を紹介してもらえる場合がある 異動・配置転換・社内公募などがある場合もある

※派遣と直接雇用のどちらが適しているかは、契約期間、仕事内容、収入、働き方の希望によって異なります。

どちらを選ぶかの基準になるのは、今回つらかった点です。

  • 契約が切れる不安が大きかったなら、期間の定めのない雇用を優先する
  • 仕事の幅を広げたかったなら、育成の仕組みがある会社を選ぶ
  • 相談先が分かりにくかったなら、入社後に相談できる担当者がいるかを確認する

このように、つらかった経験を1つずつ条件へ言い換えると、求人を見る目が変わります。時給や勤務地だけで比べていたときには気づけなかった違いも、拾えるようになるでしょう。

20代・未経験者の就業経験を、面談で仕事選びの条件に変える

派遣での就業経験は、面談で言葉にしておくと、そのまま応募先を選ぶ材料になります。ひとりで求人票を眺めていると、時給や勤務地の比較になりがちです。

しかし、働き続けられるかどうかを分けるのは、業務の任され方や相談のしやすさであることが少なくありません。

ツナグバが専門にしているのは、20代・未経験からの転職です。派遣で経験した業務を棚卸しし、どの作業が向いていたのか、何がつらかったのかを面談で一緒に整理します。

未経験者向けの研修があるか、入社後に相談できる担当者がつくかどうかは、求人票の文面から読み取れません。だからこそ、紹介の前にこちらで確認したうえでお伝えします。

派遣を続けるか正社員を目指すかで迷っている段階でも、相談してかまいません。派遣先で担当した業務は、職務経歴として説明できる材料になります。ひとりで書き出すのが難しければ、面談で話しながら整理するほうが早く進むでしょう。

派遣の引き止めがしつこいときは、契約確認と相談先の準備から始めよう

派遣の引き止めに悩んだときは、退職の意思を伝える相手が派遣元だと確認するところから始めてください。時給や配置の条件を提示されても、その場では答えず、書面に反映されるかどうかで判断しましょう。

手続きが進まない、強い言葉で引き止められるという場面では、派遣元の相談窓口、派遣先の苦情の申出先、都道府県労働局という順に相談先があります。やり取りの記録さえ残しておけば、どの窓口でも説明に時間はかかりません。

そして、辞めたあとの働き方は、今回つらかった点から決めてください。ツナグバでは、20代・未経験からの転職を専門に、派遣での経験を次の職場の条件へ整理するところから相談を受け付けています。ひとりで抱え込まず、一度話を聞かせてください。

派遣を辞めたあとの働き方も、一緒に整理しませんか?

しつこい引き止めを乗り越えても、派遣を続けるか正社員を目指すか、次の職場で何を重視するかが決まらなければ不安は残ります。ツナグバでは、派遣で経験した業務と今回つらかった点を整理し、20代・未経験から目指せる求人を一緒に比較できます。

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この記事の監修

海老名 信行

海老名 信行

取締役/COO
株式会社ツナグバ

大学卒業後、株式会社ギャプライズにてWebマーケティング支援の営業として、大企業を中心とした新規顧客開拓とリレーション構築に従事。
次に、株式会社サイファーポイントに取締役/営業責任者として参画。新規顧客開拓、DXコンサルティング、WEBマーケティング支援を経験。
プロフィール紹介

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