会社都合で退職しても、住民税が自動的に免除されることはありません。減免を受けるには自分で申請し、審査を通る必要があるからです。
「会社都合で辞めたのだから、住民税は免除されるのでは」「収入がないのに納付書が届いて、どう払えばいいかわからない」。突然の退職で戸惑う20代は少なくありません。
この記事では、住民税が自動で免除されない理由と、減免の対象になり得る条件を整理します。退職月ごとの支払い方法や申請の3ステップ、減免が認められなかったときの選択肢もまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
会社都合退職でも住民税は自動で免除されない理由

会社都合退職は雇用保険では手厚く扱われますが、住民税の考え方は別物です。免除されない背景には、税額の計算方法と、減免制度が自治体ごとに設計されている事情があります。
- 住民税は前年の所得をもとに翌年6月から支払う必要があるから
- 一律の基準がなく、自治体ごとの審査で個別に判断されるから
この章では上記2点を解説します。
住民税は前年の所得をもとに翌年6月から支払う必要があるから
退職後に納付書が届くのは、住民税が「去年の自分」にかかる税金だからです。1月1日から12月31日までの1年間の所得をもとに計算され、その翌年度に課税されます。
会社員のうちは、6月から翌年5月まで毎月の給与から天引きされます。これを特別徴収といいます。一方、退職して自分で納める形に切り替わると、普通徴収として自宅に納付書が届きます。
在職中は天引きのため、住民税を意識する場面は少ないでしょう。ところが退職すると、収入が途絶えたあとに前年分の請求だけが残ります。「今は無収入」という事情は、税額そのものには反映されません。まずは納付書で年税額と各期の納期限を確認し、いつまでにいくら必要かをはっきりさせるところから始めましょう。
一律の基準がなく、自治体ごとの審査で個別に判断されるから
住民税の減免は全国一律の制度ではありません。地方税法が定めているのは減免を認める枠組みだけで、具体的な基準は各自治体の条例に委ねられています。そのため、条件も減額の割合も市区町村ごとに異なり、申請しても認められるとは限りません。※2026年7月時点。各市の公表内容にもとづく。
住民税は1月1日(賦課期日)時点の住所地で課税されるため、課税年度の1月1日に住んでいた自治体のホームページを参照しましょう。
会社都合退職で住民税の減免対象になり得る条件

減免の審査では、離職理由と所得・資産の状況の両方が見られます。どちらか一方を満たすだけでは、対象にはなりません。ここでは次の2つの条件を確認します。
倒産や解雇など会社都合による離職と認められる場合
まず問われるのは、辞めた理由が自分の意思によるものかどうかです。大阪市は失業による減免の対象を「解雇や倒産などにより失業され雇用保険基本手当の受給資格がある場合」と定めています。正当な理由のない自己都合退職や定年退職は、この対象に含まれません。
判断の根拠になるのは、退職の事実と離職理由が記された離職票と、ハローワークが交付する雇用保険受給資格者証です。雇用保険受給資格者証とは、失業給付(基本手当)を受け取る資格があると認められた人に渡される証明書を指します。
雇止めや契約期間の満了で辞めた人も、対象から外れるとは限りません。自分の意思とはいえない事情で離職したと認められる区分を、特定理由離職者といいます。
この区分に該当すると、離職理由コードによっては雇用保険上で特定受給資格者に準じた扱いを受けられる場合があり、交付された受給資格者証が減免申請の根拠書類になり得ます。退職時に受け取った書類は一式まとめて保管し、離職理由コードの記載を先に確かめておいてください。
前年の所得や預貯金など自治体が定める基準を満たす場合
離職理由の要件を満たしても、家計に余力があると判断されれば減免は認められません。減免は納付が困難な人の負担を軽くする制度であり、退職後の所得見込みと手元の資産まで審査の対象になります。
ここで気をつけたいのは、金額の足切りが前年ベースだという点です。今年の収入が途絶えていても、前年の所得が基準を超えていれば対象になりません。「当年の所得見込金額」は、収入が前年より増えていないことを確かめるための条件です。
申請の前に納税通知書と通帳を並べ、前年の所得と現在の残高を書き出しておくと、窓口での相談がスムーズに進みます。
退職月によって住民税の支払い方法が変わる

会社都合退職では退職日を自分で選べないことが多く、辞めた月によって残りの住民税の払い方が変わります。最後の手取り額にも直結するため、自分がどのパターンに当たるかを先に確認しておきましょう。
| 退職した月 | 残りの住民税の扱い |
|---|---|
| 1月〜4月 | 5月分までの未徴収分を、最後の給与や退職金から一括徴収 |
| 5月 | 5月分まで天引きされ、6月からの新年度分は納付書で納付 |
| 6月〜12月 | 原則は普通徴収へ切り替え。申し出れば一括徴収も選択できる |
【1月〜4月退職】未徴収分が原則として一括徴収される
1月から4月に退職した場合、5月分までの住民税は最後の給与や退職金からまとめて差し引かれます。地方税法にもとづき、会社に一括徴収が義務づけられているためです。
たとえば2月末に退職すると、3月から5月までの3か月分が最終給与から引かれます。年税額12万円なら3万円がまとめて引かれる計算で、最後の手取りは想定より少なくなるでしょう。
なお、給与や退職金が未徴収額に満たないときは、残りが普通徴収に回ります。退職日が決まった時点で最終給与の見込み額を経理担当者に確認しておけば、当面の生活費の計画を立てやすくなります。
【5月退職】5月分まで給与天引きされ、新年度分は6月以降に納付する
5月は住民税の年度の最終月にあたるため、退職しても未徴収分は残りません。住民税は6月から翌年5月までの12回に分けて天引きされ、5月分がその最後の1回です。最終給与から差し引かれるのは通常どおり1か月分で、一括徴収による手取りの目減りは起きません。
ただし、負担が軽くなるわけではないので注意が必要です。6月から始まる新年度分は、前年1月から12月までの所得にもとづいてあらためて課税されます。6月ごろに自宅へ納税通知書と納付書が届き、そこからは自分で納める形です。
働いていない期間に1年分の請求を受け取ることになるため、5月退職は資金繰りの見通しが重要になります。納付書が届いたら、第1期の納期限までに払えるかどうかを早めに見極めてください。
【6月〜12月退職】普通徴収へ切り替えか一括徴収を選択する
6月から12月に退職する場合は、残りの住民税をどう払うかを自分で選べます。会社に一括徴収を申し出れば最後の給与などからまとめて差し引かれ、申し出がなければ普通徴収に切り替わります。普通徴収に切り替わったあとは、市区町村から届く納付書で各期ごとに納める形になるのが一般的です。
どちらが向いているかは、手元の資金と管理のしやすさで決まります。退職金があり先に払い切りたい人は一括徴収、当面の生活費を確保したい人は普通徴収を選びましょう。
ただし普通徴収を選ぶと、納期限の管理も自分の役割になります。納付書が届いたら各期の納期限をカレンダーに書き写し、うっかり過ぎないようにしておくと安全です。転職先がすでに決まっているなら、新しい勤務先で特別徴収を続けられる場合があるので、入社手続きの際に相談してみてください。
会社都合退職後に住民税の減免を申請する3ステップ

減免は申請しなければ適用されません。期限を過ぎた分は受け付けられないので、納付書が届いたら余裕をもって準備します。手順は次の3ステップです。
- 自治体サイトで対象条件・申請期限・相談窓口を確認する
- 離職票や収入・資産を確認できる書類など、自治体指定の必要書類をそろえる
- 自治体が定める期限までに申請書と必要書類を提出する
以下で、詳しく紹介します。
自治体サイトで対象条件・申請期限・相談窓口を確認する
まずは、住んでいる自治体の減免制度のページをチェックしましょう。条件も期限も自治体ごとに違うため、必ず確認してください。
なかでも急いで確かめたいのは、申請の期限です。大阪市は普通徴収の申請期限を「減免を受けようとする納期の納期限」と定めており、期限を過ぎた税額は減免できません。京都市も、原則として納期限までの申請を求めています(2026年7月時点)。
第1期の納期限を過ぎてから相談すると、その期の分は対象外になる可能性があります。ページを読んでも判断がつかないときは、住民税を担当する課へ電話し、自分の離職理由と現在の収入を伝えて確認してください。
離職票や収入・資産を確認できる書類など、自治体指定の必要書類をそろえる
減免の審査では、離職理由と家計の状況を書類で示す必要があります。窓口で「収入がありません」と口頭で伝えるだけでは、判断材料になりません。大阪市が求めている書類は、次のとおりです(2026年7月時点)。
| 書類 | 何を証明するか |
|---|---|
| 雇用保険受給資格者証の写し または離職日と離職理由がわかる退職証明書など |
会社都合による離職であること |
| 求職活動を行っていることを示す書類 | 働く意思があり、失業状態が続いていること |
| 当年の所得見込金額がわかる給与明細などの写し | 退職後の収入が基準を下回ること |
| すべての預貯金等の金融資産額を確認できる通帳や残高証明書の写し | 手元の資産が基準を超えていないこと |
並べてみると、審査で見られているのは離職理由・働く意思・現在の家計の3点です。雇用保険受給資格者証はハローワークでの手続き後に交付されるため、基本手当の申請を先に済ませると準備が早く整います。通帳はメインで使う口座だけでなく、すべての口座について求められる点にも注意してください。
自治体が定める期限までに申請書と必要書類を提出する
書類がそろったら、減免申請書とあわせて期限内に提出します。提出方法は窓口や郵送が基本で、自治体によっては電子申請を受け付けている場合もあるため、事前の確認が欠かせません。
審査には一定の時間がかかり、結果は後日通知されます。判断を待つあいだに納期限が過ぎると、延滞金が生じることがあります。納期限が目前に迫っているなら、提出と同時にその事情も担当課へ伝えておくと安心です。
また、申請すれば必ず減額されるわけではなく、認められるかどうかは審査次第です。申請の段階で猶予や分割納付という選択肢も知っておくと、通知を受け取ってからの動きが早くなります。
住民税の減免が認められない場合の対応

住民税の減免が認められない場合の対応は以下のとおりです。
- 徴収猶予を利用できるか自治体へ確認する
- 家計の状況を伝えて分割納付が可能か相談する
減免の対象外になったとしても、納付を放置してよいわけではありません。滞納が続けば延滞金が加算され、督促を経て財産の差押えに進む可能性もあります。支払いが難しいときは、次の2つを自治体へ相談してください。
徴収猶予を利用できるか自治体へ確認する
減免が難しい場合でも、納付の時期を先送りする徴収猶予という制度があります。地方税法にもとづく仕組みで、一時に納付できないと認められたときは、1年以内の期間に限って徴収が猶予されます。猶予が認められた期間は延滞金の全部または一部が免除され、財産の差押えも原則として行われません。
ただし、猶予は税額そのものが消える制度ではありません。あくまで支払いを待ってもらう仕組みで、猶予期間が終われば残りを納めることになります。
申請には収支の状況がわかる書類が必要で、要件や様式は自治体ごとに異なります。まずは納税の担当課へ電話し、「会社都合で退職して一時に納められない」と伝えるところから始めてください。
家計の状況を伝えて分割納付が可能か相談する
猶予の要件に当てはまらないときでも、分割での納付に応じてもらえる場合があります。自治体としても滞納が放置される事態は避けたいため、相談に来た人と無理のない納付計画を組むのが一般的です。
相談の場には、月々の収入と家賃・光熱費・保険料などの支出、基本手当の見込み額を書き出して持参してください。「毎月いくらなら払えるか」を数字で示せると、話し合いは具体的に進みます。
20代が会社都合退職後の生活再建と再就職を同時に進める3ステップ

住民税の手続きを片づけただけでは、生活の不安は消えません。20代の会社都合退職では、目の前のお金と次の仕事を並行して整えることが再建の近道になります。ここでは次の3ステップを紹介します。
住民税を含む固定費と基本手当の見込みを整理する
まずは、毎月出ていくお金と入ってくるお金を1枚の紙に書き出しましょう。金額がはっきりすれば、減免や猶予を相談すべきかどうかを自分で判断できます。
- 家賃
- 住民税
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
- 通信費
- 食費・日用品
- 交通費
収入側の柱になるのは、雇用保険の基本手当です。倒産や解雇で職を失った人は特定受給資格者にあたり、給付制限を受けません。7日間の待期期間を過ぎたところから支給が始まります。
所定給付日数は、30歳未満で被保険者期間が5年未満の場合90日です。支給額の目安は離職前の賃金の5割から8割程度で、上限額も定められています。90日はおよそ3か月分にあたるため、受給が始まった時点から再就職の準備も並行して進めましょう。
健康保険・年金・雇用保険の手続きを期限順に進める
退職後の手続きは、期限が短いものから順に片づけます。順番を決めておくだけで、無保険の期間や申請漏れを防ぎやすくなります。
| 手続き | 期限の目安 | 会社都合退職の人が知っておきたいポイント |
|---|---|---|
| 国民健康保険への加入 | 退職日の翌日から14日以内 | 倒産・解雇などの非自発的失業者は、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算(離職日の翌日から翌年度末まで) |
| 健康保険の任意継続 | 退職日の翌日から20日以内 | 軽減後の国民健康保険料と比べ、安いほうを選べる |
| 国民年金への切り替え | 退職日の翌日から14日以内 | 失業を理由とする特例免除。本人の前年所得を除いて審査を受けられる |
| 雇用保険の受給手続き | 離職票が届き次第ハローワークへ | 特定受給資格者は給付制限がなく、待期期間の翌日から支給が始まる |
表で押さえておきたいのは、住民税と国民健康保険料では軽減の受け方が違う点です。住民税の減免は、申請と審査を経て決まります。
一方、国民健康保険の軽減は、倒産や解雇で職を失った非自発的失業者のために用意された別枠の制度で、雇用保険受給資格者証などを添えて届け出れば適用されます。国民年金の特例免除も、離職票や受給資格者証の写しを添えて申請できるので頭に入れておきましょう。
ただし、いずれも自動では始まりません。国民健康保険と国民年金は市区町村の窓口で同じ日にまとめて済ませ、雇用保険の手続きはハローワークで別途行う、と分けて予定を組むと動きやすくなります。
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重要なのは、会社都合退職でも住民税は自動で免除されないという前提に立つことです。前年の所得にかかる後払いの税金である以上、退職して収入が途絶えても納付義務は残ります。
それでも、自治体が定める所得や預貯金の基準を満たし、納期限までに申請すれば、全額免除や一部減額を受けられるかもしれません。
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この記事を書いた人
竹本 甲輝(たけもとこうき)
株式会社ツナグバ 公式サイト
Work Experience: 飲料メーカー
Hobby: ゴルフ
MBTI: 論理学者-INTP-
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この記事の監修
海老名 信行
取締役/COO
株式会社ツナグバ
大学卒業後、株式会社ギャプライズにてWebマーケティング支援の営業として、大企業を中心とした新規顧客開拓とリレーション構築に従事。
次に、株式会社サイファーポイントに取締役/営業責任者として参画。新規顧客開拓、DXコンサルティング、WEBマーケティング支援を経験。
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