「格闘家」という職業は、多くの人にとって身近な仕事ではありません。
テレビや試合のイメージから、華やかさや強さを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし実際の格闘家の生活は、日々のトレーニング、厳しい減量、身体管理、そして指導やジム運営など、地道な努力の積み重ねによって成り立っています。
今回取材したのは、総合格闘家として活躍しながらジム「イデアアサクサ(IDEA ASAKUSA)」を運営する松嶋こよみさん。プロ総合格闘家として国内外で試合を重ね、戦績を積み上げてきた一方で、地域の子どもたちやアマチュア選手の指導にも力を入れています。
この記事では「職業としての格闘家」というテーマにフォーカスしながら、松嶋こよみさんの言葉を通して、そのリアルな仕事観と人生観を紹介します。
プロ総合格闘家・松嶋こよみ選手とは
総合格闘技という競技は、リングの上だけで語れるものではありません。
日々のトレーニング、減量、身体管理、そして指導やジム運営。そうした積み重ねの上に、ひとりの格闘家のキャリアが成り立っています。
今回インタビューした松嶋こよみさんは、日本を代表する総合格闘家の一人として国内外の舞台で戦ってきたMMAファイターです。同時に、東京都台東区浅草にある格闘技ジム「イデアアサクサ(IDEA ASAKUSA)」の代表として、選手育成や地域のトレーニング環境づくりにも力を入れています。
松嶋さんは5歳から極真空手を始め、黒帯を取得。柔道(8歳〜15歳)、レスリング(12歳〜)など複数の格闘技を経験しながら総合格闘技(MMA)の道へ進みました。2015年に修斗でプロデビューし新人王を獲得。その後、PANCRASEやONE Championshipといった舞台で試合を重ね、KO勝利を含む多くの戦績を積み上げてきました。
近年は世界の舞台を目指して活動を続け、ROAD TO UFC(RTU)にも参戦。さらにLFAとの契約を経て海外での試合にも挑戦しています。2024年にはTOP BRIGHTSでカルシャガ・ダウトベックと対戦するなど、世界レベルの選手たちと戦い続けてきました。
また2025年にはKNOCK OUTのUNLIMITEDルールにも参戦し、打撃格闘技の舞台でもその実力を見せています。
格闘家として世界の舞台で戦いながら、浅草のジム「イデアアサクサ」で次の世代を育てる。その両方を担っているのが、松嶋こよみ選手の大きな特徴です。
格闘家という仕事とは?松嶋こよみが語る職業としてのリアル

格闘家という職業について、松嶋こよみさんはとても率直に語ります。
「格闘技って、すごく苦しいスポーツなんですよ。人前で殴り合わなきゃいけないし、見返りがすごく大きい仕事でもない」
華やかな世界に見える格闘技ですが、実際は地味で苦しいトレーニングの連続です。それでもこの道を選び続けてきた理由について、松嶋さんはこう続けます。
「それでもやっぱり好きだから続けられるし、格闘技が好きな人たちが集まってくれるからやっていけるんだと思います」
松嶋こよみさんが積み上げてきた試合や戦績、ノックアウトでの勝利の背景には、こうした日々の積み重ねがあります。
この言葉から伝わるのは、格闘家という職業が単なる勝敗だけで成立するものではないということです。好きだから続けることができる。そして、その世界を好きな人たちが集まる場所を作ることもまた、格闘家の役割のひとつだと松嶋さんは考えています。
松嶋こよみさんが語る格闘家の仕事。減量と身体管理は試合の外でも続いている

格闘家という仕事は、試合の日だけで完結するものではありません。むしろ、本当の仕事は試合に向けた日々の準備の中にあります。トレーニング、体調管理、食事、そして減量。リングに上がるまでの時間そのものが、格闘家としての仕事と言えるのかもしれません。
松嶋こよみさんは、試合前になるとおよそ1か月をかけて体重を10キロほど落とすこともあると話します。格闘技の世界では珍しいことではありませんが、身体への負担は決して小さくありません。それでも松嶋さんは、淡々とこう語ります。
「もちろんストレスはありますけど、仕事だと思うと意外とできちゃうんですよね」
この言葉からは、格闘家としての覚悟とプロ意識が感じられます。体重を落とすことも、食事を管理することも、すべては試合に向けた仕事の一部。好き嫌いではなく、職業として向き合っているからこそ続けられるのだといいます。
食事もまた、単なる楽しみではなくコンディション管理の一つです。練習と指導が続く日には、昼食をゆっくり取れないことも多いそうです。そんなときは、パンやおにぎりなど、短い時間でも素早くエネルギーを補給できるものを選ぶことが多いといいます。
「昼はエネルギー補給っていう感じですね。練習したあとに指導もあるので、とりあえずエネルギーが足りない状態にならないようにしています」
一方で、運動前の食事には気をつけていることもあるそうです。以前、昼に揚げ物を食べて練習をしたとき、ずっと気持ち悪さが残ってしまった経験があったといいます。
こうした小さな経験の積み重ねが、格闘家としての身体管理につながっています。
そして試合が終わると、ようやく厳しい食事制限から解放されます。松嶋さんは、そんなときの楽しみについても笑いながら話してくれました。
「減量が終わると、ハンバーガー3つとか食べちゃうんですよ。ミスタードーナツも好きで、ハニーチュロをずっと食べてたりします」
こうしたエピソードを聞くと、格闘家という仕事が単にリングの上で戦うだけのものではないことがよく分かります。日々の身体管理、食事の選び方、減量への向き合い方。そのすべてが積み重なって、ようやく試合という舞台に立つことができるのです。
華やかな試合結果や戦績だけを見ると見えにくい部分ですが、実際にはこうした減量と身体管理こそ、格闘家という仕事の土台になっています。
松嶋こよみさんの話からは、格闘家という職業が、見えないところで続く努力と自己管理によって支えられている仕事であることが伝わってきました。
イデアアサクサ(IDEA ASAKUSA)を引き継いだ松嶋こよみさんの想い

現在、松嶋こよみさんは、自身が代表を務めるジム「イデアアサクサ(IDEA ASAKUSA)」の運営にも携わっています。
このジムは、もともと別のオーナーが立ち上げた場所でした。松嶋さんは以前から指導の手伝いをしていましたが、オーナーが亡くなったことをきっかけに仲間とともにジムを引き継ぐことになりました。
「最初は身内で練習できればいいという感じのジムだったんですけど、引き継ぐなら地域に根ざした場所にしたいと思いました」
松嶋さんが目指しているのは、地域の子どもたちや近所の人たちが通いやすい場所であること。そして、プロを目指す選手にとっても成長できる環境であることです。
「僕らがまだ現役で戦っているので、今の格闘技の一番新しいものを教えられるのは強みだと思います」
また、ジムのロゴやTシャツなどのデザインも松嶋さん自身が手がけています。
「できるだけお金をかけないようにして、できることは自分たちでやろうと思ってやっています」
格闘家として戦うだけではなく、場を作り、人を育て、地域とつながる。それもまた松嶋こよみさんにとっての「格闘家」という仕事の一部です。
松嶋こよみさんが20代に伝えたいこと「夢がなくても挑戦していい」

インタビューの最後に、20代で将来に迷っている人へのメッセージを聞きました。
未経験転職メディアを見ている読者の多くは、「やりたいことが見つからない」「このままでいいのか分からない」といった不安を抱えています。そんな人たちに対して、松嶋こよみさんはとても率直な言葉を返してくれました。
松嶋さん自身は、子どもの頃から格闘家になる道が決まっていたと言います。空手を始めたのは4〜5歳ごろ。その後も柔道やレスリング、キックボクシングなどを続けながら、自然と総合格闘技の道へ進んでいきました。
「僕の場合は、もう格闘技をやる道が決まってたんですよ。家族も格闘技が好きで、格闘技だけをやる道を作ってくれていたので」
幼いころから一つの道をまっすぐ歩んできた人生。しかし、だからこそ見えているものもあると松嶋さんは話します。もし人生をもう一度やり直せるとしたらどうするか。そう尋ねると、少し考えてからこう答えてくれました。
「もし自由だったら、もっといろんなことをやっていたかもしれないですね」
格闘技の世界に深く入り込んできたからこそ、別の世界を見てみたかったという気持ちもある。これは決して後悔ではなく、人生を一つの道に集中してきた人だからこそ出てくる実感なのかもしれません。
だからこそ、夢がまだ見つかっていない20代の人たちに対して、松嶋さんはこう言います。
「夢がないなら、むしろいろいろトライしてみたらいいんじゃないかなと思います」
格闘家として数多くの試合を経験してきた松嶋こよみさんだからこそ、その言葉には重みがあります。
最初から自分の進む道が決まっている人は、実はそれほど多くありません。何が向いているのか、どんな仕事が合うのかは、実際にやってみないと分からないことも多いからです。挑戦してみて初めて、「これは違う」「これは面白い」という感覚が見えてくることもあります。

そして最後には、少し笑いながらこんな言葉も添えてくれました。
「一回イデアアサクサに来てトレーニングしてみてください。これしんどいなって思ったら、他のことが楽に感じるかもしれないです」
厳しい世界を長く生きてきた格闘家の言葉には、説得力があります。格闘技のトレーニングは決して楽ではありません。しかし、そんな経験をしてみると、自分がこれまで「大変だ」と思っていたことの見え方が変わることもあるかもしれない。そんなユーモアを交えながら、松嶋さんは行動することの大切さを伝えていました。
進む道が見えないとき、人は立ち止まりがちになります。しかし、松嶋こよみさんの言葉が教えてくれるのは、答えは最初から見つけるものではなく、動きながら見えてくるものだということです。夢がなくてもいい。迷っていてもいい。だからこそまずは小さく挑戦してみること。その一歩が、次の道につながっていくのかもしれません。
まとめ
松嶋こよみさんの話から見えてきたのは、「プロ総合格闘家」という職業のリアルな姿でした。
格闘家の仕事は試合だけではありません。日々のトレーニング、減量、食事管理、指導、ジム運営など、生活そのものが仕事として続いています。
そして、格闘技の魅力を次の世代に伝え、人が集まる場所を作ることもまた松嶋こよみさんが考える格闘家の役割です。
もし今、自分の進む道が分からない人がいるなら、まずは何かに挑戦してみること。松嶋こよみさんの言葉には、その一歩を後押しする力がありました。
「IDEA ASAKUSA」は、東京都台東区浅草にある格闘技ジム・フィットネスジムです。キッズ体操教室、総合格闘技(MMA)、柔術、フィジカルトレーニングなど幅広いクラスを展開し、初心者から上級者、女性やお子さままで安心して通える環境が整っています。
指導を担うのは、現役格闘家の松嶋こよみ選手と、ONE Championshipファイターの澤田千優選手。世界で戦ってきた経験をもとに、基礎から丁寧に教えてくれるのが魅力です。広々としたマットスペースに加え、更衣室・シャワーも完備しています。
よくある質問
松嶋こよみとは?どんな総合格闘家ですか?
松嶋こよみ(本名:松嶋朔)は、神奈川県横浜市出身の日本人総合格闘家です。極真空手をバックボーンに柔道・レスリング・キックボクシングなどを経験し、2015年に修斗でプロデビュー。同年に修斗ウェルター級新人王を獲得しました。ONE Championshipなど世界の舞台でも試合を行い、現在も活躍しているMMAファイターです。
松嶋こよみの戦績は?試合実績はどのくらいありますか?
松嶋こよみのプロ総合格闘技戦績は、2025年時点で22試合15勝7敗です。KO勝利やTKO勝利も多く、修斗、PANCRASE、ONE Championshipなど国内外の大会で試合を行ってきました。ONE Championshipではフェザー級タイトルマッチにも挑戦しています。
松嶋こよみはUFCや海外大会にも挑戦していますか?
松嶋こよみは世界最高峰の舞台を目指し、2022年にはUFC契約をかけた大会「ROAD TO UFC」に出場しました。またONE Championshipでも世界フェザー級タイトルに挑戦するなど、海外大会でも活躍しています。
松嶋こよみのバックボーン(格闘技歴)は?
松嶋こよみは幼少期から極真空手を始め、柔道、レスリング、キックボクシングなど複数の格闘技を経験してきました。これらのバックボーンを持つことで総合格闘技(MMA)でも高い打撃力と組み技の強さを持つファイターとして知られています。
松嶋こよみのジム「IDEA ASAKUSA(イデアアサクサ)」とは?
IDEA ASAKUSA(イデアアサクサ)は東京都台東区浅草にある格闘技ジムです。総合格闘技(MMA)、柔術、フィジカルトレーニング、キッズ体操などのクラスを行っており、初心者から選手志望まで通えるジムとして地域のトレーニング拠点となっています。
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