いきなり退職届は非常識?法律上の扱い・パワハラ時の出し方と例文を解説

いきなり退職届は非常識?法律上の扱い・パワハラ時の出し方と例文を解説

「上司に相談せず、いきなり退職届を出してもよいのだろうか」
「退職届をいきなり出すのは非常識だと思われそう」
「パワハラを受けているので、上司とはもう話したくない」

このような悩みを抱えている人もいるでしょう。

結論からいうと、いきなり退職届を提出することが、直ちに違法になるわけではありません。ただし、一般的には退職の意思を上司へ伝え、退職日を相談してから書面を提出する方が、会社とのトラブルを避けやすくなります。

一方、パワハラや体調不良などで通常の手順を踏むことが難しい場合は、自分の安全や健康を優先する必要があります。

この記事では、いきなり退職届を出す場合の法律上の扱い、円満退職の進め方、パワハラを受けている場合の提出方法を解説します。

目次

いきなり退職届を出すのは非常識?

上司に何の相談もなく退職届を出すと、会社から「急すぎる」「先に相談してほしかった」と思われる可能性はあります。

しかし、職場の慣習に沿っていないことと、法律に違反していることは同じではありません。

退職の意思がすでに固まっている場合、退職届を提出して意思表示すること自体は可能です。

最初に押さえておきたいポイント

  • いきなり退職届を出すことと、今日から無断で出社しないことは別
  • 無期雇用と有期雇用では、退職に関する法律上の扱いが異なる
  • 法律上の期限だけでなく、就業規則も確認する
  • パワハラや体調不良がある場合は、円満退職より安全を優先する
  • 退職理由に争いがある場合は、会社の書類へ安易に署名しない

「突然の提出」と「即日退職」は同じではない

退職届を突然提出したからといって、その日のうちに自動的に雇用契約が終了するわけではありません。

「本日、退職届を提出する」ことと、「本日付で退職する」ことは分けて考える必要があります。

即日退職は、会社と本人が合意すれば可能です。また、状況によっては、やむを得ない事情による契約解除が問題になることもあります。

一方的に退職届を置き、そのまま連絡せず出社しなくなると、欠勤や引き継ぎをめぐるトラブルにつながる可能性があります。

退職届・退職願・辞表の違い

いきなり書面を提出する前に、退職届と退職願の違いを理解しておきましょう。

書類 意味 使われる場面 注意点
退職願 会社へ退職を願い出る書類 退職日や条件を相談したいとき 会社の承諾を前提とする合意退職の申込みと解釈されることがある
退職届 退職する確定的な意思を届け出る書類 退職の意思と退職日が固まっているとき 提出後の撤回が難しくなる可能性がある
辞表 役職や公務員の地位を辞する意思を示す書類 会社役員や公務員など 一般的な会社員は、通常「退職届」または「退職願」を使用する

すでに退職を決めていて会社の承諾を待たずに意思表示したい場合は、退職願ではなく退職届を使用する方法があります。

ただし、会社指定の書式や提出方法がある可能性もあるため、就業規則を確認しましょう。

いきなり退職届を出す場合の法律上のルール

退職できる時期は、雇用期間の定めがあるかどうかによって異なります。

特に、正社員、契約社員、派遣社員などの名称だけでは判断せず、雇用契約書に記載された契約期間を確認することが重要です。

無期雇用は原則として退職を申し入れられる

期間の定めがない雇用契約では、民法第627条により、労働者は解約の申入れができます。

大阪労働局の案内では、期間の定めがない雇用契約について、解約の申入れから2週間で終了すると説明されています。会社が同意しなければ絶対に退職できない、というものではありません。

ただし、会社の就業規則に「退職希望日の1か月前までに申し出る」などの規定がある場合は、まずその内容も確認しましょう。

円満退職を目指すのであれば、可能な範囲で就業規則に沿って申し出ることが望ましいといえます。

有期雇用は契約途中の退職に注意する

契約社員など、雇用期間が定められている場合は、原則として契約期間の途中で自由に辞められるとは限りません。

民法第628条では、やむを得ない事由がある場合、契約期間の途中でも解除できるとされています。ただし、事情や契約期間によって判断が異なります。

契約の種類 基本的な考え方 確認するもの
期間の定めがない契約 民法上、原則として解約の申入れから2週間で終了する 就業規則、雇用契約書、退職希望日
期間の定めがある契約 原則は契約満了まで。やむを得ない事由や会社との合意が問題になる 契約期間、更新履歴、退職理由、会社との合意
会社と即日退職で合意した場合 双方が合意した日を退職日とすることができる 合意内容、退職日、給与や貸与品の精算

有期雇用で契約途中の退職を希望する場合は、自分だけで判断せず、労働局の総合労働相談コーナーや専門家へ相談することも検討してください。

いきなり退職届を出す前に確認したい6項目

退職届は、勢いで提出するのではなく、最低限の確認をしてから提出しましょう。

  1. 雇用契約に期間の定めがあるか
  2. 就業規則では何日前までの申出が必要か
  3. 退職希望日まで何日あるか
  4. 残っている有給休暇は何日か
  5. 会社から借りている物と返却方法
  6. 退職後の仕事・生活費・社会保険をどうするか

転職先が決まっていない場合は、当面の生活費も確認しておく必要があります。

雇用保険の基本手当は、退職すればすぐに必ず振り込まれるものではありません。受給資格や離職理由、申請時期などによって支給開始時期が変わります。

いきなり退職届を出してもやむを得ないケース

原則としては、先に上司へ退職の意思を伝えた方が、手続きを進めやすくなります。

しかし、次のような事情がある場合は、通常の順番にこだわりすぎないことも重要です。

パワハラを受けていて上司と話せない

直属の上司がパワハラの加害者である場合、その上司へ一対一で退職を申し出ることが、新たな被害につながる可能性があります。

無理に直属の上司へ提出せず、次の窓口を利用しましょう。

  • 上司より上の管理職
  • 人事・労務部門
  • 社内のコンプライアンス窓口
  • 労働組合
  • 労働局の総合労働相談コーナー
  • 弁護士などの専門家

会社の外部へ相談する際は、パワハラが発生した日時、場所、言われた内容、相手、目撃者などを整理しておくと、状況を説明しやすくなります。

心身の不調で出社や面談が難しい

体調不良によって出社できない場合は、対面での提出にこだわる必要はありません。

医療機関を受診し、診断書が出ている場合は、会社へ提出方法を相談しましょう。退職届を郵送し、連絡をメールや書面で行う方法もあります。

ただし、「出社できないこと」と「即日で雇用契約が終了すること」は別の問題です。欠勤、休職、有給休暇、退職日などを分けて会社と確認してください。

退職を申し出ても話を進めてもらえない

以前から口頭で退職を伝えているのに、

  • 「今は忙しいから後にして」
  • 「後任が決まるまで辞めさせない」
  • 「退職届は預かれない」

などと言われ、手続きが進まないケースもあります。

この場合は、退職の意思と希望日を曖昧にせず、退職届を提出して記録を残す方法があります。直属の上司が受け取らない場合は、人事部や会社の代表者宛てに郵送することも検討しましょう。

家族の介護や緊急の事情が生じた

家族の介護、看護、転居など、急な事情で勤務の継続が難しくなる場合もあります。

事情をどこまで会社へ説明するかは本人の判断ですが、退職日を早めてもらいたい場合は、可能な範囲で理由を伝えた方が、会社の理解を得やすくなります。

いきなり退職届を出すときの正しい手順

通常の面談が可能な場合は、次の手順で進めるとトラブルを抑えやすくなります。

1.就業規則と雇用契約書を確認する

最初に、退職の申出期限、提出先、指定書式を確認します。

会社指定の退職届がある場合でも、すぐに入手できないときは、自分で作成した書面で意思表示する方法があります。ただし、会社の手続き上、後から指定書式の提出を求められることがあります。

2.直属の上司へ面談を申し込む

パワハラなどの事情がなければ、まず直属の上司へ相談します。

周囲に人がいる場所で突然渡すのではなく、次のように面談を依頼しましょう。

お話ししたいことがあります。お時間をいただけますでしょうか。

面談では、曖昧な相談ではなく、退職の意思が固まっていることを簡潔に伝えます。

一身上の都合により退職したいと考えています。退職希望日は〇月〇日です。

3.退職日を確認する

退職希望日、最終出勤日、有給休暇、引き継ぎ期間を確認します。

退職日と最終出勤日は同じとは限りません。有給休暇を消化する場合、最終出勤日の後も退職日までは在籍しています。

4.退職届を提出する

退職日が決まったら、会社のルールに従って退職届を提出します。

退職の意思表示を確実に残す必要がある場合は、提出前に写しを取っておきましょう。

5.引き継ぎ内容を整理する

引き継ぎ期間が短くても、次の項目を文書に残すと会社の負担を減らせます。

引き継ぎ項目 記載する内容
進行中の業務 進捗状況、期限、次に行う作業
顧客・取引先 担当者、連絡先、対応履歴、注意点
保管場所 資料、データ、社内フォルダの保存先
定例業務 実施日、手順、関係部署
未解決の問題 問題点、対応状況、判断が必要な事項

会社のデータや顧客情報を私物の端末へ保存することは避け、会社が指定する方法で引き継ぎましょう。

退職届の書き方と例文

退職届には、退職意思、退職日、提出日、所属、氏名、会社名などを記載します。

会社指定の書式がある場合は、その書式を優先してください。

自己都合退職の場合の例文

退職届

私儀

このたび、一身上の都合により、令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。

令和〇年〇月〇日
〇〇部〇〇課
氏名 〇〇〇〇

株式会社〇〇
代表取締役 〇〇〇〇 殿

縦書き・横書きのどちらでも構いませんが、会社の慣例や書式に合わせましょう。

パワハラが退職理由の場合の注意点

パワハラが原因なのに、会社から「一身上の都合と書いてほしい」と求められることがあります。

退職届の記載だけで離職理由が自動的に決まるわけではありませんが、後から退職理由について争いになった場合、提出した書類が判断材料になる可能性があります。

パワハラが原因で退職する前に残したいもの

  • 発言や行為があった日時・場所・内容の記録
  • メール、チャット、録音などの資料
  • 会社の相談窓口へ申告した記録
  • 同僚や目撃者に関する情報
  • 医療機関の診断書や受診記録
  • 会社から渡された退職関係書類の写し

会社が発行した離職票の退職理由に納得できない場合は、そのままにせず、ハローワークで事情を伝えてください。

厚生労働省は、繰り返し著しい嫌がらせや暴言などを受けて離職した場合、状況によって特定受給資格者に該当する可能性があると案内しています。最終的な離職理由は、会社が一方的に決めるのではなく、ハローワークが資料や双方の主張を確認して判断します。

退職届を受け取ってもらえない場合の対処法

退職届を提出しても、上司から「受け取らない」「退職は認めない」と言われることがあります。

期間の定めがない雇用契約では、退職の意思表示に会社の同意がなければ絶対に辞められないわけではありません。

上司の上司や人事へ提出する

直属の上司が受け取らない場合は、その上の管理職や人事・労務部門に相談します。

このときは、感情的に上司を批判するのではなく、事実を簡潔に伝えましょう。

〇月〇日に直属の上司へ退職の意思を伝えましたが、退職届を受け取っていただけず、手続きが進んでいません。今後の提出方法をご案内いただけますでしょうか。

会社へ郵送する

対面で提出できない場合は、会社の代表者や人事部宛てに郵送する方法があります。

配達記録が残る方法を選び、次のものを保管しましょう。

  • 退職届の写し
  • 添え状の写し
  • 郵便物の追跡番号
  • 配達されたことがわかる記録
  • 会社とやり取りしたメール

内容証明郵便を利用する方法もありますが、会社との関係や状況によって適切な方法は異なります。トラブルが深刻な場合は、発送前に専門家へ相談してください。

退職届をいきなり出す場合に避けたい行動

退職する自由があるとしても、どのような辞め方でも問題がないわけではありません。

退職届を置いて無断欠勤する

退職届を机に置いただけでは、会社が書類を確認した日や意思表示の内容を証明しにくくなります。

そのまま連絡せず欠勤すると、退職日までの勤怠をめぐる問題にもつながります。出社できない事情がある場合も、可能な範囲で連絡を残しましょう。

会社のデータや備品を持ち出す

パソコン、スマートフォン、社員証、制服、鍵、顧客資料などは、会社の指示に従って返却します。

私物を持ち帰る際も、会社の機密情報や顧客情報が混ざっていないか確認してください。

SNSで会社や上司を批判する

事実だと考えている内容でも、SNSへ投稿すると、守秘義務や名誉をめぐる別のトラブルが生じる可能性があります。

パワハラなどの問題は、SNSではなく、会社の窓口、労働局、労働組合、弁護士などへ相談しましょう。

事実と異なる退職理由に署名する

退職理由や退職日が事実と異なる場合は、その場で署名せず、内容を確認してください。

特に、会社から退職を迫られたのに「本人都合で退職を申し出た」とする書類へ署名すると、後から経緯を説明する必要が生じる可能性があります。

退職を決めた後は転職準備も進めよう

現在の職場から離れることに意識が集中すると、退職後のキャリアが後回しになりがちです。

しかし、転職先が決まっていない状態で退職すると、収入が途切れるだけでなく、焦って次の会社を選んでしまう可能性があります。

体調に問題がなく、転職活動を進められる状態であれば、退職手続きと並行して次の準備を始めましょう。

準備すること 具体的な内容
退職理由を整理する 不満だけでなく、次の職場で実現したいことへ言い換える
経験を棚卸しする 担当業務、実績、得意なこと、身についた能力を整理する
希望条件を決める 仕事内容、勤務地、給与、休日、職場環境に優先順位をつける
応募先を調べる 求人票だけでなく、事業内容や働き方、選考方法も確認する
面接対策をする 前職への批判だけにならない退職理由を準備する

急いで辞めたいときこそ次の職場を慎重に選ぶ

パワハラや過重労働などで苦しい状態にいると、「今の会社でなければどこでもよい」と考えてしまうことがあります。

しかし、退職を急ぐあまり、自分に合わない会社へ転職すると、短期離職を繰り返す原因になりかねません。

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いきなり退職届を出す場合のよくある質問

Q. いきなり退職届を出すのは非常識ですか?

事前の相談なしに提出すると、会社から急だと思われる可能性はあります。ただし、いきなり提出したことだけで直ちに違法になるわけではありません。パワハラや体調不良など、通常の手順を踏めない事情がある場合は、安全と健康を優先しましょう。

Q. 退職届を出した当日に辞められますか?

会社と本人が合意すれば、当日を退職日にできます。ただし、退職届を提出しただけで必ず即日退職できるわけではありません。無期雇用・有期雇用の違いや、やむを得ない事由の有無によって扱いが異なります。

Q. 退職届をいきなり郵送してもよいですか?

パワハラ、体調不良、受取拒否などで対面提出が難しい場合は、郵送する方法があります。退職届の写しと配達記録を保管し、送付後は人事担当者などへ連絡して、退職日や貸与品の返却方法を確認しましょう。

Q. 上司が退職届を受け取ってくれない場合はどうしますか?

上司より上の管理職や人事・労務部門へ相談します。それでも手続きが進まない場合は、会社の代表者や人事部宛てに、配達記録が残る方法で郵送することも検討してください。

Q. 退職届を出した後も出勤する必要がありますか?

退職届を提出しても、退職日までは雇用関係が続きます。会社と合意していない状態で出勤しなければ、欠勤として扱われる可能性があります。有給休暇、休職、欠勤、最終出勤日を会社と確認しましょう。

Q. 退職届を出せば引き継ぎをしなくてもよいですか?

退職日まで勤務できる状態であれば、可能な範囲で引き継ぎを行う方がトラブルを避けやすくなります。体調不良などで出勤できない場合は、書面やデータで引き継げる内容がないか会社と相談してください。

Q. パワハラが原因でも「一身上の都合」と書くべきですか?

退職理由をめぐって争いになる可能性がある場合は、安易に事実と異なる内容を記載・署名しないことが大切です。パワハラの記録や相談履歴を保存し、労働局やハローワーク、専門家へ相談してください。

Q. 契約社員でも2週間前に退職届を出せば辞められますか?

契約期間の定めがある場合は、無期雇用と同じように扱えないことがあります。契約期間、更新状況、やむを得ない事情の有無によって異なるため、雇用契約書を確認し、会社や労働局へ相談しましょう。

退職届を突然出すことと無断退職は分けて考えよう

いきなり退職届を出したからといって、直ちに違法になるわけではありません。

一方で、何の連絡もなく書類だけを置いて出社しなくなると、欠勤、引き継ぎ、貸与品の返却などをめぐるトラブルにつながる可能性があります。

通常の相談ができる状態であれば、就業規則を確認し、上司へ退職意思を伝えたうえで提出する方が円満に進めやすくなります。

ただし、パワハラや心身の不調がある場合は、形式的なマナーよりも自分の安全を優先してください。直属の上司を通さず、人事や会社の相談窓口、労働局へ相談する方法もあります。

退職後のキャリアに迷っている場合は、今の職場から離れることだけでなく、次の会社で実現したい働き方も整理しておきましょう。

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編集時の参考資料

※雇用契約や退職理由によって法律上の扱いは異なります。個別のトラブルについては、労働局、労働組合、弁護士などへご相談ください。

この記事の監修

海老名 信行

海老名 信行

取締役/COO
株式会社ツナグバ

大学卒業後、株式会社ギャプライズにてWebマーケティング支援の営業として、大企業を中心とした新規顧客開拓とリレーション構築に従事。
次に、株式会社サイファーポイントに取締役/営業責任者として参画。新規顧客開拓、DXコンサルティング、WEBマーケティング支援を経験。
プロフィール紹介

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